古の 人に我れあれや ささなみの 古き都を
見ればかなしも    
                 高市黒人
(いにしえの ひとにわれあれや ささなみの ふるき
 みやこを みればななしも)

詞書・・近江の旧き都を感傷して作る歌。

意味・・私は昔の人であろうか。そうではないはず
    なのに、ささなみの大津の宮の廃墟を見る
    と、この都の栄えた頃の人であるかのよう
    に悲しいことだ。

    国土の荒廃を悲しんで詠んだ歌です。
    当今の普通の人ならば旧都の址(あと)を見
    てもこんなに悲しまぬであろうが、こんな
    に悲しいのは、古の人だからであろうかと、
    疑うが如くに感傷したものです。
           
 注・・近江の旧き都=天智天皇の近江の大津の宮
     の廃墟。壬申(じんしん)の乱(672)で戦火
     で焼かれ廃墟になった。
    ささなみ=琵琶湖中南部沿岸の古名。

作者・・高市黒人=生没不詳。柿本人麻呂と同時代 
    (700年頃)の人。

出典・・万葉集・32。