わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ 
海人の釣舟
             小野篁(おののたかむら)
             (古今和歌集・407、百人一首・11)
(わたのはら やそじまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ
 あまのつりぶね)

 意味・・たくさんの島々を目当てとして、私は大海原に漕ぎ
    出していったと、家人にきっと伝えてくれ。
    その辺の舟で釣り糸をたれている漁師たちよ。

    島根の隠岐(おき)島に流罪になり、舟に乗って出発
    する時に都に残された人々に贈った歌です。
    「海人の釣舟」にしかすがりつくものがない、孤独
    と絶望が表現されています。

注・・わたの原=広い海のこと。
    八十島=「八十(やそ)」は数の多いことを表わす。
     摂津の国難波(大阪市)から瀬戸内海の船旅になり
     島々を通り抜けるので、八十島といっている。
    海人(あま)=漁業に従事する人。

作者・・小野篁=802~852。当時の第一級の学者で漢詩文に
     優れる。嵯峨上皇に遣唐使を命じられ、断った為
     隠岐の島に流された。