花の木に あらざれめど 咲にけり ふりにし木の実 
なる時もがな              文屋康秀

(はなのきに あらざれめど さきにけり ふりにしこのみ
 なるときもがな)

意味・・花咲く木でもなさそうなのに、これは見事に咲いて
    います。それなら、ついでに古ぼけた木にも果実が
    実る時もほしいものです。
    花の咲くはずがない木に花が咲きました。それならば
    古くなったこの身にも花を咲かせて出世させてほしい
    ものです。

    宮中の渡り廊下に、木で作った造花を飾っているのを
    見て詠んだ歌です。わが身の不遇を訴えています。

 注・・花の木にあらざる=削り花、木を削って作った花のこと。
    めど=「けれども」と「馬道(めどう・めど)」を掛ける。
       馬道は建物と建物の間に厚板で囲った廊下。
    木の実=「この身」を掛ける。
    ふりにし=古にし、年を経るを掛ける。

出典・・古今和歌集・445。