吉野山 霞の奥は 知らねども 見ゆる限りは さくらなりけり
                 八田智紀(はったとものり)

(よしのやま かすみのおくは しらねども みゆるかぎりは
 さくらなりけり)

意味・・吉野山は春霞がかかって、向こうの方までは見えない
    が、見える範囲では桜、桜で桜の海である。さすがに
    吉野だ、すばらしいものだ。

    「歌書よりも 軍書にかなし 芳野山」     支考 
    「御廟(ごびょう)年経て 忍は何を しのぶ草」 芭蕉 
    「かへらじとかねて思へば梓弓なき数にいる名をぞ
    とどむる」(名歌観賞 7月10日参照)    楠木正行
    などと詠まれた吉野山。
    霞がかかっていなければ、吉野の哀史の面影を残す、
    如意輪寺(にょいりんじ)や金峰(きんぽう)神社、後醍
    醐天皇陵などが見られて、昔の無念の思いが偲ばれる
    のだか、の意です。