君まさで 煙絶えにし 塩竃の うらさびしくも 
見えわたるかな  
               紀貫之
              
(きみまさで けむりたえにし しおがまの うらさびしくも
 みえわたるかな)

意味・・ご主人が亡くなられてから塩を焼く煙も消えてしまった
    塩釜の浦ではあるが、まさに文字どおり、あたり一面が
    うら寂しく見渡されることである。

    実力者の源融(みなもととおる)左大臣が亡くなってから
    詠んだ歌です。

 注・・まさで=「ます」は「あり」「おり」の尊敬語。その
       未然形に打ち消しを表わす「で」がついたもの。
    煙絶え= 塩焼く煙が絶え。当時は塩をとるために海
       草に海水を掛けて焼いたので、その煙が「塩焼
       く煙」です。
    塩竃=宮城県塩竃市。「煙の絶えた塩の釜」と地名の
       「塩釜」を掛けている。
    うら=塩釜の「浦」と「うら悲しい」を掛ける。

作者・・紀貫之=866~945。「古今和歌集」の中心的な撰者。
     「仮名序」も執筆。「土佐日記」の作者。

出典・・古今和歌集・852。