雲はみな はらひ果てたる 秋風を 松に残して 
月を見るかな 
          藤原良経(ふじわらよしつね)
(新古今和歌集・418) 

(くもはみな はらいはてたる あきかぜを まつにのこして
 つきをみるかな)

意味・・雲をすっかり払ってしまった秋風を、松
    に残るさわやかな音として聞きつつ、澄
    んだ月を見ることだ。

    雲を吹き払い、松に音だけ残している秋
    風の中で、澄んだ月を見るさわやかさを
    詠んでいます。

注・・雲は=「雲をば」の意で主語ではない。

    なお、裏の意味として、
    徳川家康は武士が読書する目的は身を正
    しくせんがためであると言って、源義経
    が滅んだのは歌道に暗く「雲はみなはら 
    ひ果てたる秋風を・・」の古歌の意味も
    知らずに、身上(しんしょう)をつぶして
    平家退治に没頭したためと言っています。

    雲はみな=敵、辛いこと。
    はらひはてたる=取り除く。
    秋風を=味方。軍資金とか有能な部下、
        作戦、知識・・などなど。
    松に残して=味方が育つまで忍耐強く
        待つ。
    月を見る=勝って心地よい気分になる。

意味・・戦いに勝つにはそれなりの作戦が必要
    である。敵の内情をさぐり内部の分裂
    を策し、敵の勢力を分散させる一方、
    我が陣営は一人一人の志気を高め一つ
    にまとめて戦いに望むことが大切だ。
    勝てる体勢になるまで待って戦いを仕
    掛ける。そうしたならば勝利して心地
    良い気分を味わえるものだ。