海人の刈る 藻に住む虫の われからと 音をこそ泣かめ
世をば恨みじ       
             藤原直子(古今集・807)

(あまのかる もにすむむしの われからと ねをこそ
 なかめ よをばうらみじ)

意味・・漁師が刈る海藻に住む虫の名はわれから。
    その「我から」というように、二人の仲
    がしっくりゆかないのは、誰のせいでも
    無くみんな自分自身のせいなんだと泣い
    ていよう。二人の不仲を恨みがましくは
    思うまい。

    このように辛い目に会うのも、自分に原
    因があるのだからと、声をたてて泣く事
    はしても、世をうらんだりはするまい。

 注・・われから=海藻に付着している甲殻の虫、
     「我から(自ら)」を掛ける。この下に
     「(不幸を)刈る」を補って解釈する。
     「不幸」は男女間の仲たがいと解釈。
    音こそ泣め=声をたてて泣きこそしょうが。
    世=夫婦の仲、男女の仲。

作者・・藤原直子=ふじわらのなおいこ。生没年
     未詳。920年従四位下になる。