常盤なす かくしもがもと 思へども 世の事理なれば
留みかねつる         山上憶良(やまのうえおくら)

(ときわなす かくしもがもと おもえども よのことなれば
 とどみかねつる)

意味・・常磐のようにいつまでも若いままでありたいと
    思うが、老いや死は人の世の定めなので、留め
    たくとも留められない。

    この歌の前に長歌で次のようなことが歌われて
    います。
    この世の中で何ともする事が出来ないのは歳月
    が遠慮なく流れ去って行く事だ。
    勇ましい若者たちが男らしく馬に乗って獣を追
    いまわしていた、その楽しい人生がいつまで続
    いたであろうか。
    いつの間にやら握り杖を腰にあてがうがうよう
    になり、よぼよぼとあっちに行けば人にいやが
    られ、こっちに行けば人に嫌われ、老人になる
    のはつらいものだ。
    それでも長生きしたいと思うものの施すすべが
    ないものだ。

 注・・常盤=大きな岩のように長い間変わらない事。
       木の葉が年中緑であること、常緑。
    かく=斯く、このように。
    世の事理=世は生涯、寿命。事理は物事の筋道。
      人は年老いてやがて死ぬという定め。