よしや君 昔の玉の 床とても かからんのちは
何にかはせん          西行(さいぎょう)

(よしやきみ むかしのたまの ゆかとても かからん
 のちは いかにかはせん)

刹利も須陀も かはらぬものを 秋成(しゅうせい)

(せつりもしゅだも かわらぬものを)

詞書・・白峰と申す所に御墓の侍りけるに参りて。

意味・・以前立派な御座におられたとしても、君よ、
    無差別の死にあった今は、それが何となろう
    か、ただ成仏(じょうぶつ)を祈るだけだ。

    王族も農民も、死に対しては階級の差別は
    無い。

 注・・白峰=讃岐国(香川県)綾歌郡松山村白峰。
    御墓=崇徳院の墓。保元の乱(1156・地位を
     めぐり後白河天皇と崇徳上皇の争い)に敗
     れて讃岐に流され、その地で崩御する。
    よしや=たとえ・・(でも)。
    玉の床=金枝玉葉(皇族の意味)の座。
    かからん後=このように崩御された後。
    刹利(せつり)=古代インドの王族の階級。
    須陀(すだ)=古代インドの農民階級。

作者・・西行=1118~1190.家集に「山家(さんか)集」。
    上田秋成=1737~1809。「雨月物語」。