皆人を 寝よとの鐘は 打つなれど 君をし思へば
寝ねかてぬかも     笠女郎(かさのいらつめ)

(みなひとを ねよとのかねは うつなれど きみを
 しおもえば いねかてぬかも)

意味・・皆の者寝よという時の鐘は鳴っているが、
    あなたを思うと眠ろうにも眠れません。

    悩みを持たない世の常の人と比べて、
    ひとり、恋にもだえる気持ちを詠んだ
    歌です。
    その後、片思いだと観念して次の歌を
    詠んでいます。
   「相思はぬ人を思ふは大寺の餓鬼の後に
    額づくがごと」(意味は下記参照)

 注・・鐘=時守が亥の刻(午後十時頃)、人の
     寝静まるべきとされ時に打つ鐘。
    かてぬ=・・できない。

作者・・笠女郎=生没年未詳。大伴家持と交渉
     のあった女性歌人。

参考歌です。

相思はぬ 人を思ふは 大寺の 餓鬼の後に 
額づくがごと         笠女郎

(あいおもわぬ ひとをおもうは おおでらの がきの
 しりえに ぬかずくがごと)

意味・・互いに思わない人を一方的に思うのは、大寺
    の餓鬼を後から額をこすりつけて拝んでいる
    ようなものだ。

    片思いは仏ならぬ餓鬼に、しかも後から拝む
    ように、何のかいもないことだと、我が恋を
    自嘲するものです。

 注・・相思はぬ=片思いのこと。
    後(しりえ)に=後から。