一えだの梅はそへずや柊うり
               横井也有(よこいやゆう)

(ひとえだの うめはそえずや ひいらぎうり)

意味・・節分の頃となると、柊売りが来るが、柊売りよ、
    そのとげとげしい葉のほかに、梅の一枝でも添
    えたらどうかね。

    今夜は鬼が集まる夜だからといって、どこの家
    でも、鰯の頭を柊に刺し戸口に立てて身を慎ん
    だものだ。そして、声をふるわせて「福は内鬼
    は外」と鬼を追い出していたことが懐かしい。
    今ではただ形ばかりの豆まきをするようになった。
    過ぎ行く年がますます積み重なって姿は老け込み
    心は頑固になり、今では世の嫌われ者の老人が
    鬼と一緒に放り出されないのがせめてもの幸せ
    だ。

 注・・柊(ひいらぎ)うり=節分の時、焼いた鰯の頭を
     柊に刺して厄除けのまじないとして戸口に刺
     す風習があった、この柊を売る人。

作者・・横井也有=1702~1783。尾張藩御用人。俳文集
     に「鶉(うずら)衣」など。