桜花 夢かうつつか 白雲の 絶えてつねなき
峰の春風      藤原家隆(ふじわらのいえたか)

(さくらばな ゆめかうつつか しらくもの たえて
 つねなき みねのはるかぜ)

意味・・桜の花と思って見たのは、夢であったのか、
    現実であったのか分からない。桜の花と思っ
    て見た白雲が、今は消え去って、ただ、無常
    を誘う峰の春風ばかりが吹いていることだ。

    世の無常を詠んだ本歌の心を、峰の春風に
    はかなく消えた桜の花の夢幻的世界で具体化
    した歌です。

    本歌は、
    「世の中は夢かうつつかうつつとも夢とも
    知らずありてなければ」(古今集)です。
     (意味は下記参照)

 注・・夢かうつつか=夢であったのか、現実であっ
     たのか。
    白雲=「白雲」の「白」に「知ら」を掛けて
     いる。
    つねなき=常無き。無常の。花が散るのは無
     常の姿である。
    無常=いつも変化していること。全ての物が
     生滅変転してとどまらないこと。

作者・・藤原家隆=1158~1237。非参議従二位。「新
     古今集」の撰者の一人。

本歌です。

世の中は 夢か現か 現とも 夢とも知らず 
ありてなければ            読人知らず

(よのなかは ゆめかうつつか うつつとも ゆめとも
 しらず ありてなければ)

意味・・この世の中の一切のものは、はかない夢なのか、
    確かな現実なのか。現実とも夢とも区別がつか
    ない。存在していて、同時に存在していないと
    思われるから。

    過去の苦しい思いは悪夢というように、過去の
    事はもう現在は実在しない、実在していたが今
    は夢という事もできる。