今さらに なに生ひいづらむ 竹の子の 憂き節しげき
世とはしらずや   
         凡河内久躬恒(おおしこうちのみつね)

(いまさらに なにおいいずらん たけのこの うきふし
 しげき よとはしらずや)

意味・・今さらに、何だってこの世に育っていくので
    あろうか、竹の子のようにすくすく育つ我が
    子は。つらい事の多いこの世だとは、知らな
    いのであろうか。

    子供のすくすく成長していく姿が竹の子に例
    えられ、無心に育つ姿と生い先の労苦を対照
    にしています。生活の苦労が身に沁みていた
    作者は生れて来た子供も同じくつらい生き方
    をして行くだろう、という気持ちを詠んでい
    ます。

 注・・竹の子=節(ふし・よ)の枕詞。
    世(よ)=竹の節と節の間の「節(よ)」を掛ける。

作者・・凡河内躬恒=生没年未詳。907年頃活躍した人。
     「古今和歌集」の撰者の一人。