赤駒を 山野に放し 捕りかにて 多摩の横山
徒歩ゆか遺らむ    宇遅部黒女(うじべのくろめ)

(あかごまを やまのにはがし とりかにて たまの
 よこやま かしゆからん)

意味・・赤駒を放し飼いにしているので、夫が防人に
    なって出かける今、捕える事が出来ないので、
    馬にも乗せられず、多摩の延々と続いている
    この横山を徒歩で行かせることか。気の毒だ
    なあ。

    突如、赤紙が来たので、放牧してある赤駒が
    見つからず、やむを得ず延々と続いた横山を
    夫に徒歩で行かせることになった妻が途方に
    くれ、夫に気の毒だと悲しんでいる歌です。

 注・・赤駒=毛色が赤みを帯びた茶色の馬。
    放(はが)し=はなす。
    かにて=かねての訛り。・・出来ないで。
    多摩の横山=東京都豊島・文京・荒川のあたり。
    徒歩(かし)=徒歩(かち)の訛り。

作者=宇遅部黒女=豊島群の防人の妻。万葉の時代(750
    年頃)の人。