我よりも まづしき人の 世にもあれば うばらからたち
ひまくぐるなり       上田秋成(うえだあきなり)
               (藤簍冊子・つづらぶみ)

(われよりも まずしきひとの よにもあれば うばら
 からたち ひまくぐるなり)

意味・・世の中にはこの自分より貧困な人もいるのだなあ。
    棘(とげ)のある茨や潅木の隙間をくぐってまで、
    我が庵に盗みに入るとは。

    物を盗られたという体験を、自分より貧しい人が
    いたという驚きに転化した歌です。

 注・・うばら=茨。とげのある木、野ばら。
    からたち=まつかぜ草科の落葉低木、とげがある
     ので生垣に用いる。
    ひま=隙。物と物とのすき間。

作者・・上田秋成=1734~1809。江戸時代後期の国学者。
     「雨月物語」の作者。