しののめの 空霧わたり 何時しかに 秋の景色に
世はなりにけり
            紫式部(むらさきしきぶ)
              (玉葉和歌集)

(しのしめの そらきりわたり いつしかに あきの
 けしきに よはなりにけり)

意味・・夏だから暑い暑いと思って過ごしていたある日、
    ふと朝早く起きて外に出てみると、ひんやりと
    秋の気配が感じられる。夜が明けきれば、日差
    しが夏の暑気をよみがえらせる。しかし、朝霧
    が立ち込めているこのひと時、思いがけない秋
    がそこに来ていた。

    早い朝の静寂さが余情として残ります。
    
 注・・しののめ=東雲。明け方のほのかに空が白んで
     くる頃。

作者・・紫式部=978~1016。「源氏物語」「紫式部日記」