君待つと 我が恋ひ居れば 我が屋戸の 簾動かし
秋の風吹く
             額田王(ぬかたのおおきみ)
               (万葉集・488)

(きみまつと わがこいおれば わがやどの すだれ
 うごかし あきのかぜふく)


意味・・あの方のおいでを待って恋しく思っていると、
    家の戸口の簾をさやさやと動かして秋の風が
    吹いている。

    夫の来訪を今か今かと待ちわびる身は、かす
    かな簾の音にも心をときめかす。秋の夜長、
    待つ夫は来ず、簾の音は空しい秋風の気配を
    伝えるのみで、期待から失望に思いは沈んで
    行く。

 注・・屋戸=家、家の戸口。

作者・・額田王=生没年未詳。万葉の代表的歌人。