秋の田の 仮庵の庵の 苫をあらみ わが衣手は
露にぬれつつ
              天智天皇(てんじてんのう)
               (後撰集・302、百人一首・1)

(あきのたの かりほのいおの とまをあらみ わが
 ころもては つゆにぬれつつ)

意味・・秋の田の仮小屋の屋根に葺(ふ)いた苫の目が
    粗いので、夜通し小屋で番をしている私の着物
    の袖は、こぼれ落ちる露に濡れていくばかりで
    ある。

    収穫期の農作業にいそしむ田園の風景を詠んだ
    歌である。しかし、農作業のつらさという実感
    は薄く、晩秋のわびしい静寂さを美ととらえた
    歌である。

 注・・仮庵=農作業のための粗末な仮小屋。「仮庵の
     庵」は同じ語を重ねて語調を整えたもの。
    苫をあらみ=「苫」は菅や萱で編んだ菰(こも)。
     「・・を・・み」は原因を表す語法。「・・
     が・・なので」
    衣手=衣の袖。

作者・・天智天皇=626~671。蘇我氏を倒し大化の改新
     を実現。近江(滋賀県)に都を開く。