防人に 行くは誰が背と 問ふ人を 見るがともしさ
物思いもせず
            昔年(さきつとし)の防人
              (万葉集・4425)

(さきもりに ゆくはたがせと とうひとを みるが
 ともしさ ものおもいもせず)

意味・・「防人に行くのは誰の主人なの」、と尋ねて
    いる人を見るのが何ともうらやましい。何の
    気兼ねも心配もしないで。

    自分の夫を防人に出さねばならない立場と、
    そうでない人の立場。人の持つ運命的な悲し
    みは当事者以外に分からない。無遠慮に「ど
    このだれ」と尋ねている人の言葉に胸の張り
    裂けるような辛さと悲しみが湧いてくる。

 注・・誰が背=誰の夫。「背」は女性から親しい
     男性、夫をさす。
    ともしさ=「ともし」はうらやましいの意。
    物思いもせず=問うている人が、物思いを
     しない。
    昔年(さきつとし)=755年より昔年、の意。