折ふしよ 鵙なく秋も 冬枯れし 遠きはじ原 
紅葉だになし
               正徹(しょうてつ)
                (正徹物語・32)

(おりふしよ もずなくあきも ふゆがれし とおき
 はじはら もみじだになし)

(お・・・よ も・・・・・も ふ・・・し と・・
 ・・・ら も・・・・・し)

詞書・・「おもふともよもしらじ」(私が思っていて
    も相手は決してそれを知るまい)の題で。

意味・・今の季節は、鵙の鳴く秋も過ぎ、冬枯れて
    しまって、遠くのはじ原の紅葉まで見えな
    くなっている。

    沓冠(くつかむり)の折句の歌で、十の文字
    を歌の各句の頭と末に入れて詠む技法的な
    歌です。この歌では「おもふともよもしら
    じ」で題と歌の内容は関わらない。

 注・・折ふし=折節。その時々、季節。
    はじ原=ハゼの生えている原。ハゼは美し
     く紅葉する。

作者・・正徹=1381~1459。字は清巌。東福寺の書
     記を勤める。歌集に「草根集」、「正徹
     物語」。