月かげに 夜わたる雁の つらみても わが数たらぬ
友ぞかなしき
          下河辺長流(しもこうべちょうりゅう)
           (晩花集)

(つきかげに よるわたるかりの つらみても わがかず
たらぬ ともぞかなしき)

意味・・月の光によって、夜を飛んで移動する雁のつら
    なった群れを見るにつけ、自分と親しかった友
    達が一人二人と欠けて数が足りないのは悲しい
    ものだ。

    夜空の雁の群れはすでに一羽二羽と仲間を失っ
    ているかも知れないが、身近な人に死なれて、
    雁より自分の方が悲しみがつのる、という気持
    を詠んでいます。

    参考歌です。

    北へ行く雁ぞ鳴くなるつれてこし数はたらでぞ
    帰るべらなり (意味は下記参照)

 注・・つら=列・連。連なること、行列。
    わが数たらぬ=親しい仲間のうちに死んで欠け
     た者がいて数が足りなくなる。

作者・・下河内長流=1628~1686。尾崎共平。下河内は
     母方の姓。万葉集の書写や注釈に励む。

参考歌です。

北へ行く 雁ぞ鳴くなる つれてこし 数はたらでぞ
帰るべらなる
                  読人しらず
             (古今集・412、土佐日記)

(きたへゆく かりぞなくなる つれてこし かずは
 たらでぞ かえるべらなる)

意味・・春が来て北国に飛び帰る雁の鳴き声が聞こえて
    くる。あの悲しそうな鳴き声は、日本に来る時
    には一緒に来たものが、数が足りなくなって帰
    るからなのだろうか。

    この歌の左注に、「この歌の由来は、ある人が
    夫婦ともどもよその土地に行った時、男のほう
    が到着してすぐに死んでしまったので、女の人
    が一人で帰ることになり、その帰路で雁の鳴き
    声を聞いて詠んだものだ」と書かれています。

 注・・べらなり=・・のようである。