山の端に あぢ群騒ぎ 行くなれど 我は寂しゑ
君にしあらねば
            舒明天皇(じょめいてんのう)
              (万葉集・486)

(やまのはに あじむらさわぎ ゆくなれど われは
 さぶしえ きみにしあらねば)

意味・・山際をあじ鴨が群れ鳴いて、騒ぎ飛行くように、
    多くの人が通り過ぎて行くけれども、私は寂しゅ
    ございます。その人々はあなたではありません
    から。

    亡き人を恋慕った歌です。
    この歌の長歌です。
    広い国土には人がいっぱいに満ち満ちて、まるで
    あじ鴨の群れのように、乱れて行き来するけれど、
    どの人も私のお慕いるあの方ではないものだから、
    恋しさに、昼は昼とて暗くなるまで、夜は夜明け
    まであなたを思い続けて、眠れないままにとうとう
    一夜を明かしてしまった。長いこの夜なのに。

    作者ははっきりせず、女性が詠んだ歌といわれ
    ている。

 注・・あぢ=小型の鴨であじ鴨。
    ゑ=嘆きをこめた感動を表す助動詞。

作者・・舒明天皇=34代天皇。