源氏をば 一人となりて 後に書く 紫女年若く
われは然らず
           与謝野晶子(よさのあきこ)
             (白桜集)

(げんじをば ひとりとなりて あとにかく しじょ
 としわかく われはしからず)

意味・・源氏物語を良人宣孝(のぶたか)を亡くして
    独り身となってから書いた紫式部は、その
    年はまだ若かったけれども、良人の寛(ひ
    ろし)を失って寡婦となった私はそうではな
    い。もう60歳近くになっていることだ。

    夫を亡くした悲しみを、若くして夫を亡く
    した紫式部を思いやることにより、忘れさ
    せ気を取り直し自分を励ませた歌です。
    
 注・・源氏=源氏物語。
    紫女=紫式部。973年頃の生まれ。
    年若く=20歳後半で夫の宣孝を亡くす。
    宣孝=藤原宣孝。950~1001。
    寛=与謝野鉄幹の本名。1873~1935。晶子
     の夫。

作者・・与謝野晶子=1878~1942。与謝野鉄幹は夫。
     昭和13年頃「新々訳源氏物語」を刊行。
     その途中に夫の寛を亡くす。歌集は「み
     だれ髪」「舞姫」「白桜集」など。