(3月26日)名歌鑑賞・1423

うぐいすの 鳴くになみだの おつるかな またもや春に
あはむとすらん
         藤原教良母(ふじわらののりよしのはは)
         (詞花和歌集・358)

(うぐいすの なくになみだの おつるかな またもや
 はるに あわんとすらん)

詞書・・夫が亡くなった後の春、鶯の鳴くのを聞いて詠む。

意味・・鶯の鳴くのを聞いても涙が落ちることだ。生きて
    再び春に逢おうとしているのだろうか。

    夫を失って、生きてゆけそうもないほどの悲しみ
の中でも、時は過ぎ春がめぐって来る事の感慨を
    詠んでいます。

 注・・あはむとすらん=春まで生きていられようとは思
    っていなかったのに、との意を含む。

作者・・藤原教良母=子の教良は日向守・従五位上。夫は
     1141年11月没。

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(3月27日)名歌鑑賞・1424

散りぬれば のちはあくたに なる花を 思ひしらずも
まどふてふかな
             僧正遍照(そうじょうへんじょう)
             (古今和歌集・435)

(ちりぬれば のちはあくたに なるはなを おもいしらずも
 まどうちょうかな)

意味・・いくら美しいかろうが散ってしまえば汚いごみに
    なる花なのに、蝶はそれを少しも知らないで、美
    しさに惑わされてひらひら飛び戯れている。

    美しいものは全て一時的にすぎないという仏教的
    思想を詠んでいます。

 注・・あくた=芥。ごみ、かす。
    まどふ=惑ふ。飛びさまようの意と、心に迷いが
     あるとの意を掛ける。     
    てふ=蝶。

作者・・僧正遍照=816~890。僧正は僧の最高の位。六歌仙
     の一人。

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(3月28日)名歌鑑賞・1425

わりなしや 人こそ人と 言わざらめ みづから身をや
思ひ捨つべき
            紫式部(むらさきしきぶ)

(わりなしや ひとこそひとと いわざらめ みずから
 みをや おもいすつべき)

意味・・辛(つら)いことだ、皆で私を仲間はずれにして
    うてあってくれないのは。

    宮仕えをしていて、同僚の女房から「生意気だ、
    澄ましている」と陰口をされて詠んだ歌です。

 注・・わりなし=つらい。
    人こそ人と言はざらめ=人を人と認めない、仲
     間と認めない。「ざら」は打ち消しの「ず」
     の未然形。「め」は卑下する語。
    みづから=その人自身、当人。
    身=自分、我が身。
    思ひ捨つ=見捨てる、顧みない。
    女房(にょうぼう)=宮中で部屋を持っている高
     位の女官。
    うてあわない=相手にしない。九州博多方面の
     方言。

作者・・紫式部=生没年未詳。973頃の生まれ。「源氏物
     語」。