うきながら 見し世は猶も 忍ばれて 聞けば恋しき
昔なりけり
           藤原家隆(ふじわらのいえたか)
           (家隆卿百番自歌合・192)
(うきながら みしよはなおも しのばれて きけば
 こいしき むかしなりけり)

意味・・憂い、つらいながらも以前見た世のことはやはり
    懐かしく忍ばれて、聞くにつけ恋しい昔だなあ。

    辛かった時を懐旧して、今の喜びをかみしめて
    いる歌です。

    参考歌です。

   「ながらへばまたこの頃や偲ばれむ憂しと見し世ぞ
    今は恋しき」

 注・・うき=憂き。つらいこと。
    猶(なほ)=やはり。

作者・・藤原家隆=1158~1237。新古今時代の中心的な歌人。

参考歌です。

ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しとみし世ぞ
今は恋しき                  
         藤原清輔(ふじわらのきよすけ)
         (新古今集・1843、百人一首・84)

(ながらえば またこのごろや しのばれん うしとみし
 よぞ いまはこいしき)

意味・・この先、生きながらえるならば、つらいと感じている
    この頃もまた、懐かしく思い出されることだろうか。
    つらいと思って過ごした昔の日々も、今では恋しく
    思われることだから。

    今の苦悩をどうしたらよいものか・・

 注・・憂し=つらい、憂鬱。

作者・・藤原清輔=1104~1177。当時の歌壇の第一人者。