唐衣 着つつなれにし 妻しあれば はるばる来ぬる 
旅をしぞ思ふ              
            在原業平(ありひらのなりひら)
            (古今集・410、伊勢物語・9段)

(からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる
 たびをしぞおもう)
(か・・・・ き・・・・・・ つ・・・・  は・・・・・・   た・・・・・)

意味・・くたくたになるほど何度も着て、身体になじんだ衣服
    のように、慣れ親しんだ妻を都において来たので、都を
    遠く離れてやって来たこの旅路のわびしさがしみじみと
    感じられることだ。

    三河の国八橋でかきつばたの花を見て、旅情を詠んだ
    ものです。各句の頭に「かきつばた」の五文字を置い
    た折句です。この歌は「伊勢物語」に出ています。

 注・・唐衣=美しい立派な着物。
    なれ=「着慣れる」と「慣れ親しむ」の掛詞。
    しぞ思う=しみじみと寂しく思う。「し」は強調の意
     の助詞。
    三河の国=愛知県。

作者・・在原業平=825~880。従四位上・美濃権守。行平は
     異母兄。「伊勢物語」。