世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも
鹿ぞ鳴くなる    
          藤原俊成(ふじわらのとしなり)
         (千載和歌集・1151、百人一首・83)

(よのなかよ みちこそなけれ おもいいる やまの
 おくにも しかぞなくなる)

意味・・世の中は逃れるべき道がないのだなあ。
    隠れ住む所と思い込んで入った山の奥
    にも悲しげに鳴く鹿の声が聞こえる。

    俗世の憂愁から逃れようと入った奥山
    にも安住の地を見出せなかった絶望感
    を、哀切な鹿の鳴き声に託して詠んで
    います。

 注・・道こそなけれ=逃れる道はないのだ、
     の意。「道」には、てだて、位の気持
     がこめられている。

作者・・藤原俊成=1114~1204年没。正三位。
      皇太后大夫。「千載和歌集」の選者。