山城の 久世の鷺坂 神代より 春は萌りつつ
秋は散りけり
          柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)
          (万葉集・1707)
(やましろの くせのさぎさか かみよより はるは
はりつつ あきはちりけり)

意味・・ここ山城の久世の鷺坂では、神代の昔からこの
    ように春には木々が芽ぶき、秋になると木の葉
    が散って、時は巡っているのである。
 
    たえず往還する鷺坂の景が、いつの年にも規則
    正しく季節に応じて変化する様を、神代の昔か
    ら一貫してこうだったのだと感動した歌です。

    この歌から、金子みすずの詩を思い出しました。

    不思議     金子みすず

    私はふしぎでたまらない、
    黒い雲からふる雨が、
    銀にひかっていることが。

   私は不思議でたまらない、
    青い桑の葉をたべている、
    蚕が白くなることが。

    私は不思議でたまらない、
    たれもいじらぬ夕顔が、
    ひとりぱらりと開くのが。

   (私は不思議でたまらない、
    白身と黄身の卵から、
    ひょうこに生まれてくることが)

    私は不思議でたまらない、
    誰にきいても笑っていて、
    あたりまへだ、といふことが。

注・・山城の久世の鷺坂=京都府城陽市久世神社の坂。
    萌(は)り=春に草木の芽や蕾がふくらむこと。