やぶ入りの夢や小豆の煮えるうち    蕪村(ぶそん)

(やぶいりの ゆめやあずきの にえるうち)

意味・・やぶ入りで久しぶりに我が家に帰った子供が、
    小豆の煮えるわずかの間にも横になって眠っ
    てしまった。さぞかし楽しい夢でも見ている
    ことだろう。束の間の安らぎと再び奉公先に
    戻ってのつらい思いが交差する。

    中国の説話、「邯鄲(かんたん)の夢」を念頭
     に置いた句です。
     (蘆生という青年が立身を志して都に上る途中、
     邯鄲の茶店で仮睡すると、夢で富貴栄達をき
     わめたが、目が覚めると,黄梁(こうりょう)が
     煮えていないわずかな間であった。それで人生
     の栄枯のはかなを悟り、郷里に戻ったという
      お話 。)       

 注・・やぶ入り=住み込みで奉公している者が、一時
     の暇を与えられて実家に帰ること。正月の 十五、
     十六日に行われた。
    夢や小豆の煮えるうち=「盧生邯鄲(ろせいかん
     たん)の夢」の故事による。昔中国の盧生が出世
     しようと都へ上る途中、茶店で食事をたのみ、
     その粟が煮える間に一眠りしたが、その夢に、
     自分の栄華をことごとく見た。目覚めて始めて
     黄粱一炊の夢であったことを知り栄華のはかなさ
     を悟ったという。
     黄粱一炊(こうりょういっすい)の夢=人間の
     一生が短く、栄枯盛衰のはかない事の譬え。
     黄粱は粟の一種。

作者・・蕪村=1716~1783。