滑川 ふかき心を たづぬれば やがてわが身の
宝なりけり
熊谷直好(くまがいなおよし)
(なめりがわ ふかきこころを たずぬれば やがて
わがみの たからなりけり)
意味・・滑川が静かに流れているが、この滑川の言い伝えを
聞いてみると、人の鑑(かがみ)となる教えがあり、
このことは私の宝に相当するものだ。
鎌倉を流れている滑川には青砥(あおと)藤綱の逸話
があります。藤綱は鎌倉の武士で、訴訟などの審理
に厳正で温かく、権力を笠に着る連中を決して許さ
なかった人です。ある時、夜中に出仕する途中で誤
って10文の銭を滑川に落します。藤綱はその時、
50文の松明を買って来させて、自ら寒い川に降り
て水底を照らし、銭10文を探し出します。この話
を聞いた人々は10文のために50文も払うとは、
と嘲(あざけ)ます。その時、藤綱はこう言ったと伝
えられています。「たかが10文であっても、川底
に沈んだままにするのは天下の損失である。しかし、
50文の支出は、商人の手に渡って天下の役に立つ。
拾った10文もまた、天下に回ってゆくのだ」と。
注・・滑川(なめりがわ)=鎌倉の東部を流れる川。
ふかき心=滑川に伝わる青砥藤綱の逸話。落した10
文を50文の松明を買って探したというお話。
作者・・熊谷直好=1782~1862。香川影樹に師事。「浦の汐貝」。
宝なりけり
熊谷直好(くまがいなおよし)
(なめりがわ ふかきこころを たずぬれば やがて
わがみの たからなりけり)
意味・・滑川が静かに流れているが、この滑川の言い伝えを
聞いてみると、人の鑑(かがみ)となる教えがあり、
このことは私の宝に相当するものだ。
鎌倉を流れている滑川には青砥(あおと)藤綱の逸話
があります。藤綱は鎌倉の武士で、訴訟などの審理
に厳正で温かく、権力を笠に着る連中を決して許さ
なかった人です。ある時、夜中に出仕する途中で誤
って10文の銭を滑川に落します。藤綱はその時、
50文の松明を買って来させて、自ら寒い川に降り
て水底を照らし、銭10文を探し出します。この話
を聞いた人々は10文のために50文も払うとは、
と嘲(あざけ)ます。その時、藤綱はこう言ったと伝
えられています。「たかが10文であっても、川底
に沈んだままにするのは天下の損失である。しかし、
50文の支出は、商人の手に渡って天下の役に立つ。
拾った10文もまた、天下に回ってゆくのだ」と。
注・・滑川(なめりがわ)=鎌倉の東部を流れる川。
ふかき心=滑川に伝わる青砥藤綱の逸話。落した10
文を50文の松明を買って探したというお話。
作者・・熊谷直好=1782~1862。香川影樹に師事。「浦の汐貝」。
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