かはづ鳴く 井出の山吹 散りにけり 花のさかりに
あはまし物を
                  詠み人しらず
               
(かわずなく いでのやまぶき ちりにけり はなの
 さかりに あわましものを)

意味・・河鹿が澄んだ声で鳴いている井出の山吹は、
    すでに散ってしまった。そうと分っていた
    ら、もっと早く来て花盛りを見たであろう
    に、花の盛りに会えないで残念な事である。

    今来て見ると山吹が散ってしまっている。
    そんなに早く散ると知っていたなら、もっ
    と早く来ればよかったのに。

 注・・かはず=河鹿、蛙。澄み切った声で鳴く。
    井出=京都府綴喜(つづき)郡井出町。蛙と
     山吹の名所として名高い。

出典・・古今和歌集・125。