海人の住む 浦漕ぐ舟の かぢをなみ 世を倦みわたる
我ぞ悲しき
            小野小町 (後撰和歌集・1090)

(あまのすむ うらこぐふねの かじをなみ よをうみ
 わたる われぞかなしき)

意味・・漁夫が住んでいる入江を漕いでゆく舟が、漕ぐ
    ための櫂(かい)を無くしたかのように、つらい
    思いをしながら、この世を生きて行く私は悲し
    い事でありますよ。
    
    他の人は何とも思わない事を、この世をいやだ
    いやだと思いつつ生きて行く我が身を、切なく
    感じて詠んだ歌です。

 注・・海人=漁夫。
    浦=入り江、海岸。
    かぢ=楫(かじ)。舟を漕ぐ道具、櫂(かい)・櫓の類。
    なみ=無み。無いので。
    倦(う)み=いやになる。「海」を掛ける。

作者・・小野小町=おののこまち。生没年未詳。833~876年
    頃の人。各地に小町伝説が伝わっている。