夫と妻が 親とその子が 生き別る 悲しき病
世になからしめ
                   小川正子
         
(つまとめが おやとそのこが いきわかる かなしき
 やまい よになからしめ)

意味・・夫婦が、あるいは親子が生き別れねばならない
    ような悲しい病気など、この世からなくなって
    しまいますように。

    悲しき病とは癩病のことである。この歌が詠ま
    た当時は治療薬が無く、病は重くなるばかりで
    あった。鼻が変形し手足が麻痺する。失明にな
    り声帯が喪失して行く。治療費も大変で親は田
    や畑を売っていた。癩病の治療に女医として献
    身していた作者は、この難病の特効薬が出来る
    事を願って詠んだ歌です。

作者・・小川正子=おがわまさこ。1902~1943。東京女
    子医学専門学校卒。長島愛生園で女医として癩病
    の治療を行った。

出典・・松田範祐著「瀬戸の潮鳴り」。