見るからに 慰めかぬる 心とも 知らず顔なる 
月の影かな
                後亀山院 

(みるからに なぐさめかぬる こころとも しらず
 がおなる つきのかげかな)

詞書・・夜が更けるまで月を御覧になって。

意味・・見ていても慰められない我が心なのに、そういう
    ことも知らぬ顔で輝いている月の光だなあ。

    美しい月光を見ていると慰められるかと思うとそ
    うではない。むしろ悲愴の念が強まるのである。
    歌が詠まれた当時は、南北朝の対立の時代であり
    院は天皇であったが、力関係によって隠棲させら
    れ不遇の身であった。そういう心境を詠んだ歌で
    す。
    参考歌です。
   「わが心慰めかねつ更級や姥捨山に照る月を見て」
      (意味は下記参照)

作者・・後亀山院=ごかめやまいん。1350~1424。第99代
     (南朝最後第4代)天皇。

出典・・新続古今和歌集。

参考歌です。

わが心 慰めかねつ 更級や 姥捨山に 照る月を見て

                   詠み人知らず 

(わがこころ なくさめかねつ さらしなや うばすて
 やまに てるつきをみて)

意味・・私のわびしい気持ちは、どうしても慰める事が
    出来なかった。更級の姨捨山に照っている明る
    い月を見ていても。

    「大和物語」説話によると、信濃国に住む
    男が、親の如く大切にして年来暮らして来
    た老いた伯母を、悪しき妻の誘いに負けて
    山へ捨てて帰るが、家に着いてから山の上
    に出た限りなく美しい月を眺めて痛恨の思
    いに堪えず詠んだ歌、です。

 注・・更級=長野県更級の地。
    姥捨山=更級郡善光寺平にある山。観月の名所。

出典・・古今和歌集・878。