ひとのいふ 富は思はず 世の中に いとかくばかり 
やつれずもがな
                  木下幸文 

(ひとのいう とみはおもわず よのなかに いと
 かくばかり やつれずもがな)

意味・・世間の人が問題にしている富の事は私は考えて
    いない。しかし、この世に生きていくうえには
    こんなにみすぼらしい生活ではなく世間並みに
    暮らしたいものだ。

    歌人としての喜びを生き甲斐にしているので、
    富については問題にしていない。
    もっとも人並に富は得られないのだが。

 注・・やつれ=やつれる、みすぼらしくなる。

作者・・木下幸文=きのしたたかぶみ。1779~1821。
     香川景樹に師事。

出典・・「亮々遺稿・さやさやいこう」。