萩の露 玉にぬかむと とれば消ぬ よし見む人は
枝ながら見よ
                 よみ人しらず 

(はぎのつゆ たまにぬかんと とればけぬ よし
 みんひとは えだながらみよ)

意味・・萩の葉の露を玉のように糸に貫こうとして、
    枝を手に取れば露はたちどころに消えてし
    まう。仕方が無い、観賞したい人は枝にそ
    の露をつけたまま見ることだ。

    萩の露があまりにもきれいなので、露の玉
    に糸を通そうと、指でつまむと消えてなく
    なってしまった。
    美は微妙なこわれやすい緊張の状態にあり、
    美にはそうしたこわれやすさ、はかなさが
    あると言っています。

    参考句です。

   「愚を以って身の芯となす玉の露」
       (意味は下記参照)      

注・・ 玉にぬかむと=露の玉に糸を通そうと。
    よし=縦し。しかたがない、ままよ。
   
作者・・よみ人しらず=作者は平城天皇とか大伴
     家持などの異説があります。

参考句です。

愚を以て身の芯となす玉の露
 
                村上護

(ぐをもって みのしんとなす たまのつゆ)

意味・・草花につけた露は滑り落ちて、はかない命で
    ある。不安定な所に身を置く露の私は愚かに
    見えるであろう。がしかし、愚かであっても
    これが私の信念なのです。草花に身を置くか
    らこそ玉の露として美しいのです。

    露ははかない事、消えやすい事に譬えられ、
    また、珠や玉として美しいものに譬えられる。
    愚は愚かな事、くだらない事の意だが、謙遜
    して言う場合もある。「荘子」の言葉に「愚
    かなるが故に道なり」と持ち上げている。
    愚には人間の賢(さか)しらな知識や損得勘定
    が働いていない。それで本当の道に合すると
    いうものです。露も愚であるからこそ美しい
    と、作者は言っています。    

作者・・村上護=むらかみまもる。1941~。愛媛大学
    卒。文芸評論家、俳人。

出典・・古今和歌集・222。