日向の国 都井の岬の 青潮に 入りゆく端に
独り海見る
             若山牧水 (別離)

(ひゅうがのくに といのみさきの あおしおに いりゆく
 はなに ひとりうみみる)

意味・・日向の国南端の都井の岬が太平洋の青潮の中に突入
    しているその突端に来てただ独りじっと海を見てい
    る。

    明治40年に、無医村の都井村に出稼ぎに来て診療
    をしている父に逢う為、東京から帰って来た時に詠
    んだ歌です。
    
    「日向の国都井の岬」の「日向の国」は単なる説明
    ではなく「遂に遥々とこの都井の岬までやって来た
    なあ」という深い感慨がこもっています。

    東京から帰ってきて、日向の国の岬の岩鼻にただ独
    りじっと海に見入る歌人・牧水の心には何を思って
    いたのであろうか。
    窮乏のいよいよひどくなった故郷の家、その家を守
    っている老母、老いの身で家を離れ、ただ一人この
    淋しい村に出稼ぎに来て診療をやっている父、自分
    の今後進むべき道・・などさまざまな事が心に去来
    していたに相違ない。もちろんこの「独り海見る」
    だけではそこまで分るはずもないが。

    参考句です。

    秋風に独り立ちたる姿かな     良寛
               
        (意味は下記参照)

 注・・日向の国=宮崎県。
    都井の岬=宮崎県の最南端にある日南海岸にある岬。
     蘇鉄の自然林・野馬が居り南国情緒の観光地。

作者・・若山牧水=わかやまぼくすい。1885~1928。宮崎県
     東臼杵郡に生まれる。早稲田大学英文科卒。尾上
     柴舟に師事。

参考句です。

秋風に独り立ちたる姿かな        良寛

(あきかぜに ひとりたちたる すがたかな)

意味・・秋の風が肌寒く吹いている。その風に吹かれて
    独り立ち尽くして、どのように生きるべきか、
    また世の人の幸せのためには、どうしたら良い
    かと、思い悩んでいると、心までが冷たく感じ
    られる。これが私に与えられた姿なのかなあ。

    生き難い人々の苦しみに思いを寄せて、しきり
    に涙を流す良寛です。

 注・・秋風=この秋風には、晩秋の一種の悲愴感が感
     じられる。