冬ごもる 病の床の ガラス戸の 曇りぬぐへば
足袋干せる見ゆ
             正岡子規 (竹の里歌)

(ふゆごもる やまいのとこの がらすどの くもり
 ぬぐえば たびほせるみゆ)

意味・・寒い冬中を家にこもって病床に臥している
    自分であるが、病室のガラス障子の曇りを
    ぬぐってみたら、庭に足袋を干してあるの
    がよく見えた。

    干されている足袋は子規が履くものであろ
    う。歩行の自由の欠く子規は、直接の看病
    には有難く感謝しているものの、目の見え
    ない所で自分の為に苦労してくれている家
    族の姿を見て、感謝をより一層込めて詠ん
    だ歌です。

 注・・冬ぐもる=冬の寒いうち、家の中にこもっ
     ている。
    病の床=子規は結核で客血し、脊髄カリエ
     スで腰を痛め歩行困難になり長年病床に
     臥す。

作者・・正岡子規=まさおかしき。1867~1902。
     東大国文科中退。俳句・短歌の革新運動
     を進め写生主義をとる。歌集「竹の里歌」。