かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば
夜ぞふけにける
            大伴家持 
         (新古今和歌集・620、百人一首・6)

(かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきを
 みれば よぞふけにける)

意味・・かささぎが七夕の宵に羽を並べて橋として織女
    星を渡すという伝説の天上の橋、この橋ならぬ
    宮廷の御階(みはし・階段)におりている霜の白
    いのを見るといつのまにか、夜がふけてしまっ
    たことだ。

    冬の夜ふけのきびしい寒さを、宮中の御階(階
    段)におりた霜の白さによってとらえた歌です。

注・・かささぎの橋=陰暦7月7日の夜、七夕の二星、
     牽牛星と織女星とが逢う時、かささぎが翼を
     並べて天の川にかけるという想像上の橋。
     ここでは、宮中の御階(みはし・階段のこと)
     に見立てている。宮中を天上界と見て、橋を
     階(はし)と見たもの。
    霜の白きを見れば=霜がおりるのは深夜から末
     明にかけて。霜の白さを見て夜が更けたのに
     気がつく。その白さを見て寒さの厳しさも表
     わしている。

作者・・大伴家持=おおとものやかもち。718~785。
     大伴旅人の子。「万葉集」の編纂も行う。