ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある
昔なりけり
               順徳院 
           (続後撰集・1205、百人一首・100)

(ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なおあまり
 ある むかしなりけり)

意味・・宮中の古びた軒端の忍ぶ草を見るにつけても、偲
    んでも偲びつくせないほど慕(した)わしいものは
    昔のよき御代(みよ)なのだ。

    鎌倉幕府に圧迫され、意のままにならない現状へ
    の不満を、朝廷の力が充実していた昔を偲んだ形
    で表現した歌です。 

 注・・ももしき=内裏、宮中。
    古き軒端=古びた皇居の軒の端。
    しのぶ=昔を懐かしく思う意の「偲ぶ」と「忍ぶ
     草」の掛詞。「忍ぶ草」は羊歯の一種。邸宅が
     荒廃しているさまを象徴する表現。
    なほ=やはり、依然として。
    あまり=度を越しているさま、あんまりだ。
    昔=皇室の栄えていた過去の時代。

作者・・順徳院=じゅんとくいん。1197~1242。後鳥羽天
     皇の第三皇子。承久の乱により佐渡に流される