玉きはる 生命のはてに 言りたまふ み言なれど
聞きとれぬ
                  小泉苳三 

(たまきわる いのちのはてに のりたまう みことば
 なれど ききとれぬ)

詞書・・死にゆく父。

意味・・臨終も迫っている父の言う言葉は幽(かす)かで
    意味が聞き取れなかった、そのつらさと悲しみ。
    後になっても忘れられず、心にかかっている。

 注・・玉きはる=「命」の枕詞。

作者・・小泉苳三=こいずみとうぞう。1894~1957。東
     洋大卒。立命館大教授。近代短歌研究者。

出典・・歌集「夕潮」。