月さえて 野寺の鐘の 声すなり いまや草葉の
霜もみつらん
                木下長嘯子

(つきさえて のでらのかねの こえすなり いまや
 くさばの しももみつらん)

意味・・空には月が冷え冷えと輝いていて、遠い野の果
    てにある寺院の鐘が静かに聞こえて来る。もう
    すぐ夜の霜が降りて草の葉も白く染められてし
    まうだろう。

    張継の漢詩「楓橋夜泊」の詩情を念頭に入れた
    歌です。

    参考です。

    楓橋夜泊 (ふうきょうやはく)  張継

     月落烏啼ないて 霜天に満みつ  
        (つきおちからすないて しもてんにみつ)
     江楓漁火 愁眠に対す
        (こうふうぎょか しゅうみんにたいす)
     姑蘇城外の寒山寺
        (こうそじょがいのかんさんじ)
     夜半の鐘声 客船に到る
        (よわのしようせい かくせんにいたる) 

   (月が西に沈んだ闇夜に、烏の鳴き声が響きわたり、
    あたりは凛とした霜の冷気に満ち満ちている。
    岸辺の楓と明るく輝く漁火が、眠れず物思いにふ
    ける私の目に映る。姑蘇城の外れの寒山寺からは
    夜半を知らせる鐘の音が、この客船まで聞こえる)

  
注・・さえて=冴えて。冷えて。
    霜満天=霜の降りるような寒さが一面に満ちわたる
    江楓=川のほとりのかえで。
    漁火=夜、魚をとるために船でたく火。
    愁眠=旅の寂しさから、寝つかれずうつらうつらし
    ていること。
    姑蘇=蘇州の別名。
    寒山寺=蘇州市の郊外にある寺。

作者・・木下長嘯子=きのしたちょうしょうし。1569~16
    49。秀吉に仕えたが関が原の戦い後幽居。細川幽斎
    と親交。

出典・・後藤安彦著「日本史群像」。