夕暮は 松をへだてて 浦千鳥 ともよびかはす
天橋立
               頓阿

(ゆうぐれは まつをへだてて うらちどり ともよび
 かわす あまのはしだて)

意味・・日が沈むのを待って千鳥たちがやって来ます。
    松並をへだてて、互いに呼び交わすかのように
    鳴き声をたて、その千鳥たちが、砂嘴(さし)の
    水辺に遊ぶのです。天の橋立の夕暮れ時は。

    鷺(さぎ)やカモメなどが小魚や水棲虫を汀でつ
    いばむ昼間、千鳥たちはどこかに隠れている。
    この小鳥は他の水鳥がねぐらへ帰る夕暮れを待
    って現れ、水辺を遊び場にする。
    夕暮れを待ってやって来る千鳥たちは、松並に
    遮られて見えないのだから、松並の裏側、内海
    の汀に先ず群がれて友を呼び、親を呼び交わし
    ます。

    唱歌「浜千鳥」、参考です。

         作詞:鹿島鳴秋、作曲:弘田龍太郎

     青い月夜の浜辺には
     親を探して鳴く鳥が
     波の国から生まれ出る
     濡れた翼の銀の色

     夜鳴く鳥の悲しさは
     親をたずねて海こえて
     月夜の国へ消えてゆく
     銀のつばさの浜千鳥

 注・・松=待つを掛ける。
    浦=裏を掛ける。
    砂嘴(さし)=潮流や風などの作用で、砂地が海
     岸から細長く伸びだしたもの。天の橋立も砂
     嘴。

作者・・頓阿=とんあ。1289~1372。兼好とともに二条
     派、為世の門。南北朝期の歌僧。

出典・・松本章男著「京都百人一首」。