西上人 長明大人の 山ごもり いかなりけむ年の 
ゆうべに思ふ
               佐々木信綱

(さいしようにん ちょうめいうしの やまごもり いかなり
 けんとしの ゆうべにおもう)

意味・・昔の西行法師や鴨長明の山居の生活はどんなふうで
    あったのだろうか。年の暮れに思う。

    自分も年老いて一人で山荘生活をしているものの、
    現代文明の恩恵をこうむって何不自由のない生活を
    している。日が暮れて暗くなれば電気がある。寒く
    なれば暖房があり、暑ければ冷房もある。けれど西
    上人、長明大人(うし)の時代は違う。電気もなけれ
    ばガスもない。それがどれ程住みにくかっただろう
    かと、思いやった歌です。

 注・・西上人=西行法師。崇(あが)めて上人といった。
    長明大人(うし)=鴨長明のこと。長明は僧でないので、
     大人といった。「大人」は師匠・学者・先人の敬称。
    年のゆうべ=年の暮れ。

出典・・佐々木信綱歌集・遺詠(前川佐美雄著「秀歌十二月」)