真木の屋に つもれる雪や 解けるらん 雨に知られぬ
軒の玉水
                   宗尊親王

(まきのやに つもれるゆきや とけるらん あめに
 しられぬ のきのたまみず)

意味・・真木の屋に積もった雪が解けたのであろうか。
    雨では見られない玉のような雫が軒から落ち
    ている。

    参考歌です。

    山深み 春とも知らぬ 松の戸に たえだえ
    かかる 雪の玉水    (意味は下記参照)
             
 注・・真木の屋=杉や檜で屋根をふいた家。

作者・・宗敬親王=むねたかしんのう。1242~1275。
     33歳。鎌倉第六代将軍。

出典・・文応三百首・197(中世和歌鎌倉編・新日本古典
    文学大系)。

参考歌です。

山深み 春とも知らぬ 松の戸に たえだえかかる 
雪の玉水
                式子内親王

(やまふかみ はるともしらぬ まつのとに たえだえ
 かかる ゆきのたまみず)

意味・・山が深いので、春になったとも知らない山家(やまが)
    の松で作った戸に、とぎれとぎれに雪どけの玉のよう
    に美しい滴(したた)りが落ちかかっている。

    しんと静まった風景の中で滴りの音だけがする。この
    ことより、深山の雪に埋もれた山荘にも、かすかな春
    の訪れが来た事を詠んでいます。

 注・・松の戸=松の枝や板でを編んで作った粗末な戸。
    たえだえに=とぎれとぎれに。

作者・・式子内親王=しよくしないしんのう。1149~1201。

出典・・新古今和歌集・3。