我れゆ後 生まれむ人は 我がごとく 恋する道に
あひこすなゆめ
                  柿本人麻呂

(われゆのち うまれんひとは わがごとく こいする
 みちに あいこすなゆめ)

意味・・私よりも後に生まれて来る人は、この私のよう
    に、恋する道に踏みこんでくださるな、決して。

    私は恋の苦しみに悩んで来た。後世の人よ、恋
    に敗れて気力を無くす思いをしないでくれ。

 注・・ゆ=・・から。動作の時間的・空間的起点を表す。
    道=恋の苦しさを道に譬える。
    あひ=相。ともに・・(恋を)する。
    こす=下手に出て頼む意。・・してほしい。
    な=禁止の助詞。
    ゆめ=禁止表現を伴って、けっして。

作者・・柿本人麻呂=かきのもとのひとまろ。生没年
    未詳。810年頃死亡。宮廷歌人。

出典・・万葉集・2375。