ふかみどり はやまの色を 押すまでに 藤のむらごは
咲きみちにけり           
                   恵慶

(ふかみどり はやまのいろを おすまでに ふじの
 むらごは さきみちにけり)

意味・・ここは深い緑の木がおおう里山。藤の花が咲き
    充ちた今は、花の紫の濃淡が全山の緑を押し負
    かすほどになっているではないか。

    藤は蔓性の植物。木々の梢から梢へ、枝から枝
    へ、蔓が這い伝う。山の斜面が紫の花房に縫い
    綴られた状態を詠んでいます。

 注・・はやま=端山。山の麓のあたりや人里に近い低
     山をいう。「葉山」を掛ける。
    藤のむらご=「斑濃・むらご」は同じ色で濃淡
     がまだらになっているもの。藤の花びらは色
     の濃い紫のところと薄い紫のところがある。

作者・・恵慶=えぎょう。生没年未詳。960年頃活躍し
     た平安時代の僧。

出典・・松本章男著「花鳥風月百人一首」。