朴の花猶青雲の志 
                川端茅舎

(ほおのはな なおせいうんの こころざし)

意味・・朴の花は五月に咲く。そのとき辺り一面は、
    目に痛いばかりの新緑である。明るく降り
    そそぐ初夏の陽光に、萌え生ずる鮮やかな
    若葉がきらめいている。そんな情景の中に、
    白い朴の花が咲いている。自然界の、あの
    清々しい息吹きが、さわやかな薫風にのっ
    てやって来る。見つめていると、青雲の志
    を抱き奮闘した若き日々が脳裏を駆け巡る。
    そして思うのだ。「何を弱気になっている
    んだ。まだまだ、これからだ。まだまだ、
    これから頑張らなくてどうする!」

 注・・朴(ほお)の花=木蓮科の花。5月頃香りのあ
    る白い大きな花が咲く。樹木の葉の中では
     葉は一番大きく、昔は紙皿やアルミホイ
     ルの代わりに使われた。

作者・・川端茅舎=かわばたぼうしゃ。1897~1941。
    画家であり俳人。画は岸田劉生に師事、俳句
    は高浜虚子に師事。長年、脊髄カリエスを患
    う。

出典・・半田青涯著「歴史を駆け抜けた群雄の一句」。