世の中に なほもふるかな しぐれつつ 雲間の月の
いでやと思へど
                   和泉式部

(よのなかに なおもふるかな しぐれつつ くもまの
 つきの いでやとおもえど)

意味・・世の中は依然として時雨が降り続けるものだ。
    雲間の月は、さあ雲から出ようと思うのだけ
    れど。
    私は憂き世で涙を流しながら日を送っている。
    迷いを振り払って出家したいと思いながら。

    思い切って出家して髪を下ろしてしまおう。
    自分も傷つき、人をも傷つけるこの我執(が
    しゅう)、妄執を断ち切るには、そうする他
    はないと思うのだが。雲の間から出ようとす
    るたびに、折りからの時雨で隠されてしまう
    月のように、思い患うこと多い憂き世から離
    れるに離れない。
    
   「雲間の月のいでやと思へど」の現代風の一例
    で言うと、
    人間関係のもつれで、人々が期待どおり動い
    てくれず、それを恨み悲しんでいる立場。反
    発している相手の言い分もあるはずだから、
    思い切って聞いてみようと思うのだが、それ
    が中々出来ない・・・。

 注・・なほも=やはり。
    ふる=「降る」と「経(ふ)る」を掛ける。
    しぐれつつ=自分が涙を流していることの暗
     示をしている。
    雲=時雨を降らす雲。迷いや悩みの暗示。
    いでや=月が出る意と出離の意を掛ける。
    出家・出離=苦しみを発生させる原因その物
     を断ち切るため、僧になり修行すること。
     修行の一つに「布施」があり、物質的な物
     を与える財施、友人が悩んでいる時に相談
     してあげる法施、人に力を貸したり、奉仕
     したり、笑顔で人に接したり、優しい言葉
     を掛ける人施など。「布施」以外にも多く
     の戒律がある。

作者・・和泉式部=いずみしきぶ。976~?。「和泉
    式部日記」。

出典・・新古今和歌集・583。