雲雀より空にやすらふ峠かな
                    芭蕉

(ひばりより そらにやすろう とうげかな)

詞書・・臍峠(ほぞとうげ)。

意味・・峠の風に吹かれていると、下の方から雲雀
    の鳴く声が聞こえて来た。なんと雲雀より
    高いところで休息しているのだなあ。

    雲雀は雀よりやや大きく褐色の地味な色を
    しているが、鳴き声が良く、高空をさえず
    りながら飛ぶ。雲雀が鳴く高いところより
    上で休息しているので、臍峠からの眺望の
    素晴らしさが暗示されている。その眺望を
    目の前にした時の愉快な気持ちが「やすら
    ふ」という言い方になっている。峠の頂上
    まで歩いて来たという旅の心地よい達成感
    や疲労感まで詠んだ句です。

 注・・臍(ほぞ)峠=奈良県桜井市と吉野郡吉野町
     との境にある峠。標高467m。上下とも
     峻坂である。

作者・・芭蕉=ばしょう。1644~1695。松尾芭蕉。

出典・・笈の小文。